World Ballet Day2023 ヨーロッパの19カンパニー

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Ballet de Barcelona

バルセロナ・バレエ団はライブに見れず、アーカイブは見つけられませんでした。

Eesti Rahvusballett (Estonian National Ballet)

エストニア国立バレエはバレエ団の方針や新制作のくるみ割り人形についてのインタビューの後、カタジナ・コジエルスカ《オープン・ドア》の舞台映像。22:47くらいからです。ビゼーの交響曲第1番を使っているので、バランシン《シンフォニー・インC》のリプロダクション?と思いましたが、そうではなくネオクラシックな新作でした。プリンシパルの森田愛海さんが主役です。

観客から観て、右に扉、左にベッド、その他さまざまな場面から想像するに絵画のフラゴナール「かんぬき」からインスピレーションを得た作品かなあ。タイトルもOpen Doorですしね。音楽から、どうしてもバランシンの傑作が脳内に再生されてしまうので、私なら、他の音楽だったらもっと楽しめたと思います。でもさすが元シュツットガルトのプリンシパル、愛海さんがきれいです。

The Norwegian National Ballet

ノルウェー国立バレエ団は18〜21歳のバレエⅡのクラスレッスンからスタート。レジデント・コレオグラファーのAlan Lucien Øyenのインタビューの後、ザンダー・パリッシュ改訂《ライモンダ・スイート》、ナタリア・マカロワ版《白鳥の湖》のコール・ド・バレエ、サマンサ・リンチ《カウチ》のスタジオリハーサルを配信。

Finnish National Ballet

フィンランド国立バレエ団はクラスレッスンをライブ配信しましたが、テクニカルな都合でアーカイブできなかったそうですが、ワールドプレミアを控えたデヴィット・ビントレー振付《クリスマス・キャロル》の紹介映像もWBDの企画として配信されました。

原作はチャールズ・ディケンズの有名なクリスマス・ストーリー:冷酷無比、エゴイスト、守銭奴の主人公スクルージがクリスマスに過去・現在・未来、3人の精霊によって不思議な体験をすることで改心する物語。

スクルージは冷酷な人物だし、怖いゴーストが出てきたりしますが、それだけにハートウォーミングな結末が幸せ気分を倍増させ、家族で楽しめる最高のクリスマスバレエだ、とデヴィットがインタビューで話していました。

全3幕のこのバレエのために作られたサリー・ビーミッシュのカラフルな音楽、華やかな賞歴を持つデザイナーのアンナ・フライシュレによる舞台装置や衣装、演劇的・映画的なデヴィッドの振付や演出、ぜひ観たいです!

Opéra national de Paris

芸術監督ジョゼ・マルティネスが、「ヌレエフ」スタジオの扉を開けて、ジル・イゾアール先生のレッスンが始まっている様子からスタート。こんな演出はパリ・オペラ座らしくてきゅんとします。

バレエ団のピアニスト辻德子(Tsuji Naruko)さんによる伴奏はエレガントでいいですね。バー・レッスンでは今年エトワールに昇進したマルク・モローがよく映る位置にいますが、ラインが綺麗で、揺るぎのないバランスも美しいっ。ジル先生もいまだにびっくりするほど柔軟性が高いですね。

センターでは同じく今年エトワールに昇進したポール・マルクが魅せてくれました。ポールのジャンプは惚れ惚れしますね。無理なくナチュラルに高く高く。

ちゃんと少人数で男女を分けて、振りを出した後にはマークをしてピアノのリズムを確認したり、マネージュやフェッテまできっちりレッスンして終わりました。ジル先生のレッスンは本当にいつものオペラ座のレッスンなんだろうな、と見ていて最高に楽しかったです!!!

Sofia Opera and Ballet

ソフィア・オペラ&バレエはブルガリアの首都ソフィアの国立文化機関です。ロルカ・マシーン《ゾルバ》の映像と、ロルカによるリハーサル風景や主要キャストのインタビュー、舞台の映像。

ロルカはベジャールダンサーでもあったので《ゾルバ》のギリシャの踊りはベジャールを思い起こさせます。プレミア当初よりもダイナミクスを変えたり、現代のダンサーに合わせてヴァージョンアップしていて、今の観客も熱狂的に楽しめる作品になってるように見えました。

《ゾルバ》のようなコーラスとオケが一体となった楽しい作品を、もっと日本でも観れたらいいなと心底思います。お祭り好きな日本人、特にバレエを知らない人でも間違いなく楽しめる作品、すごく観に行きたくなりました。

Polish National Ballet

ポーランド国立バレエ団はナタリア・マカロワ版《ラ・バヤデール》のスタジオリハーサルをサクッと30分配信。第1幕ニキヤとソロルのパ・ド・ドゥから。プリンシパルのChinara Alizadeはニキヤがとても似合うダンサーで、もっと踊るところが観たかったです。

ゴールデン・アイドルが全身金ピカに変身する舞台裏では、スプレーが冷たくて、上に着たり出来ないので寒いのが大変だそうです。そうですよね!想像したこともありませんでした。それはダンサー、しかもあの踊りをいきなり踊る役として辛いっ。

その後、ゴールデン・アイドル役の3人のリハーサルで、最後にコールド・バレエの影の王国。バレエマスターも話していましたが、私もやっぱりバヤはマカロワ版が好きです。

Royal Swedish Ballet

スウェーデン王立バレエでは、あれ?ジョゼがこっちにも!パリ・オペラ座の芸術監督ジョゼ・マルティネス版《海賊》のリハーサルの超ダイジェストを約10分配信。以前にエレオノラ・アバニャートに頼まれた作品を、ニコラ・ル・リッシュ芸術監督と改めて新制作しているのだそうです。ニコラの顔は見当たりませんね。残念。

プリンシパルのルイーザ・ロペスのリハーサルから始まりますが、昔のABTのジュリー・ケントのメドーラを思い出しました。こういう感じのバレリーナはなんかほろっときて好き。可愛いいい!!

Teatro alla Scala

ミラノ・スカラ座バレエ団はマニュエル・ルグリ芸術監督がオープニング。3つのリハーサル(うち2つは新作)を公開してくれるそうです。

最初はアレクセイ・ラトマンスキーに新作の《コッペリア》で、アレクセイによるリハーサル。2つ目はヒューストン・バレエ初演のギャレット・スミス《リヴィール》のリハーサル。こちらはまだ始まって間もないリハーサルだそうですが、ダンサーがとてもよく動けています。ギャレットのインスタグラムの10月27日にスカラのリハ映像が投稿されていて、すごく今のスカラのダンサーに合っている作品で良さそうです。

3つ目はシモーヌ・ヴァラストロの新作《メメント》、元パリ・オペラ座のダンサーのシモーヌがイタリア語でリハーサルをしているので、イタリア人なのねと思っていたら、それどころか出身はスカラ座バレエ学校とのことでした〜こちらは、音楽がどうも私には入ってこないのですが、シモーヌのイタリア語が小気味よかったです。

Staatsballett Hannover

ハノーファーバレエ団は2021年プレミアの、前芸術監督マルコ・ゲッケ《ワイルド・ストーリー》のスタジオリハーサルを配信。タイトルをカタカナにすると変になってしまいますね。オスカー・ワイルドの物語です。

繊細な芸術家であるマルコ・ゲッケは、その後も仕事の依頼が来ないようなことはなく活動されています。ハノーファー・バレエがクリスマスに再演するこのバレエを、ワールドバレエデーにウェブサイトで紹介するという意味について考えさせられました。

オスカー・ワイルドの生涯で起きた悲劇が、形を変えて、まるで予知したかのようにマルコのこの作品に重なったように感じ、無責任な報道者に対する苦々しさ、マルコへのエンパシーが増しました。マルコの人となりをよく知る人が、彼を尊敬し支えていることがわかり、私はそれを心から応援する気持ちでいっぱいです。

さてリハーサルですが、マルコの言語を熟知したコーチとダンサーが作り上げる様子とインタビューが大変魅力的。音楽はジュール・マスネ。オスカー・ワイルドと同時代に生きたマスネの音楽が、作品にこのうえなくマッチした選曲で震えます。

ピアノ協奏曲変ホ長調全3楽章と2つの即興曲から第1曲「Eau dormante」。マスネのピアノコンチェルトは私の大好きなピアニストのアレクサンドル・カントロフ×山田和樹指揮モナコフィルの昨年の映像の演奏で聴いて、ほの暗いロマンチシズムとセンセーショナルさが気に入って繰り返し聴いていました。

Eau dormanteは有名な小品なので言わずもながですが、どちらも耽美・退廃・懐疑というようなキーワードで語られる19世紀末の時代の空気を醸し出す音楽で、その時代の文学を代表するオスカー・ワイルドの生涯の物語のコラボ。舞台で観たい作品がまたひとつ増えました。センシュアルなシーンが大いに含まれます。お好みに合わない方はパスして下さいね。

Bayerisches Staatsballett

バイエルン国立バレエのクラスレッスンはバーとセンター、最後はちょっと巻き気味になってしまいましたが、とてもいいレッスンで、ピアニストのサイモン・マレーがメロディアスなブロードウェー・ナンバーでレッスンをカラフルに彩ってくれました。

続きましてはアンジェラン・プレルジョカージュ《ル・パルク》を初演キャストのローラン・イレール芸術監督がコーチ。偉大なレジェンド・ダンサーが、若く才能溢れたダンサーに継承していく様子を観れるのは、バレエファンとして感謝と感激と興奮で、ローランがリハーサルが始まる前のインタビューを受けている時点ですでに胸がいっぱいです。

Act1のアンサンブルとプリンシパルのマディソン・ヤングと日本でも大人気のジュリアン・マッケイの「出会い」のパ・ド・ドゥとAct2の「抵抗」のパ・ド・ドゥ。アンサンブルもプリンシパルたちもまだ“dignity“(=“品格“でしょうか、ローランが好きな言葉だと言ってました)が足りないので、特にジュリアン、ル・パルクのアリストクラティックな人物を演じられるようになれたら大きな成長ですね。ローランによる素晴らしいリハーサルでした。

The Stuttgart Ballett

シュツットガルト・バレエ団はライブ配信だけのようで観れませんでした(号泣)

Les Ballets de Monte-Carlo

モナコ公国モンテカルロバレエ団はクラスレッスン中にジャン=クリストフ・マイヨー芸術監督がお邪魔する感じで、ダンサーを1人づつ紹介。「普段はこんなことしませんが、国際的な私たちのバレエ団員の顔と名前を紹介するいい機会なので」とのことで、斬新でとってもチャーミングでした。レッスンコーチはベルニス・コピエテルス。彼女をまた観れる機会があるなんて、ワールドバレエデー最高です!

ベルニスに代表されるように、伝統的に長身で性を超越したような美しく個性的なダンサーが集まるカンパニーなので、スタジオの雰囲気もさることながら、クラスレッスンという名の作品を見ているようです。小池ミモザさんも鮮やかなブルーがとても素敵ですが、洗練された練習着のダンサーが多く、レッスン中の表情やボディの使い方はもちろんのこと、あらゆる美意識の高さが傑出していて目福でございます〜。そんな若いダンサーたちの只中にいても、ベルニス美しい。

ヨハン・インガー《カルメン》のリハーサル。2グループのキャストがリハーサルするところを見せてくれました。同じ音楽、振付、コーチング、なのにダンサーによって個性が出てくるところが見れるなんて、贅沢で貴重な機会でした。ジョゼ・マルティネスがスペイン国立バレエ団の芸術監督を引き受けてからの新作で、ブノア賞の最優秀振付家賞を受賞している作品。オーストラリア・バレエの来年のシーズンプログラムにもなっている、とっても魅力的な作品ですね。

続いてのリハーサルは新制作のジャン=クリストフ・マイヨー《子供と魔法》のリハーサル。モーリス・ラヴェルが「ファンタジー・リリック」と呼んだオペラとバレエを融合させた子供が主役のお伽噺がベース。ジャン=クリストフが振付だけでなく衣装などへの細かいチェックをするニュークリエイションのプロセスや、ベルニスとお利口なワンちゃんがちらっと見れて楽しかったです。

Vienna State Ballet

ウィーン国立バレエは美しい街並みをバックに、ダンサーが通勤する様子からスタート。クラスレッスンはLouisa Rachedi、ピアニストはイゴール・ザプラヴディン。マエストロが今年も弾いてます。あがる!!!!!
その後マーティン・シュレプファー《ピアノ協奏曲第3番》と《ジゼル》のスタジオリハーサル。

Istanbul State Opera and Ballet

トルコ・イスタンブール国立オペラ&バレエはライブで観れず、アーカイブは見つけられませんでした。

The Royal Danish Theatre

デンマーク王立バレエ団は、デンマークの首都コペンハーゲンの王立劇場が拠点です。クラスレッスンのダイジェストの後は、なんと!ウェイン・マクレガーによる《ダンテ・プロジェクト》の1幕のリハーサルでした。3秒くらいウェインを拝めました。

王立劇場の舞台上では2幕のリハーサル、子供ダンテ&ベアトリーチェが2ペア(バレエ学校の生徒さん)いて、待機中に舞台袖で冷えないようにお揃いの真っ赤なローブを羽織ってて可愛い。その後は新人振付家を育てるプロジェクトの紹介がありました。

わずか18分ほどの配信で、踊っているシーンをしっかり見せてくれたわけではないのですが、プリンシパルのJonathan、コール・ド・バレエのMathieuとFionaが、カンパニーや王立劇場についてツアーをしながら、にこやかに穏やかに上手に説明する様子がとても素敵で、いい環境で仕事が出来ていて、歴史のある自分のカンパニーを愛しているんだな、と思いました。ウェインもいたし、観てラッキー、な配信でした。

Dutch National Ballet

オランダ国立バレエ団はアムステルダムのオランダ国立オペラ・バレエ劇場を運河越しに望むスポットに、コリフェのコーナー・ウォルムスリーが自転車で登場してスタートします。この景色を見たら今すぐにでも劇場に行きたくなります!

クラスレッスンのコーチはジュニア・アカデミー校長のエルンスト・マイズナー、ピアニストはOlga Khoziainova。エルンストのレッスン、ピアニストの演奏、ダンサーのテクニックや雰囲気がとても洗練されていて、保存版で何度も見返したい。

《ジゼル》のストーリー紹介の後、プリンシパルのオリガ・スミルノワとヤコポ・ティッシのインタビューと《ジゼル》のスタジオリハーサル。ルシェル・ブジィ副芸術監督によるこのリハーサルが秀悦!Act1の出会いのリハで最初のアルブレヒトはジゼルにもう恋してしまっている普通の若者、ジゼルもやや対等に接していて、付き合い始めたカップルが戯れているようなノリだったのが、ルシェルに方針をもらってすぐに、一気に貴族のスノッブな青年が美しくナイーブな村に娘に心を奪われるシーンに変わりました。Act2もサクサクと、でも核心をついたリハーサル。なんと繊細で美しい2人のプリンシパル!これは必見ですよ。

ダンサーが身体を鍛えたりメンテナンスを行うためのピラティスマシンなどが充実したジムの紹介の後は、衣装のアトリエへ。狩りをするときの貴族の衣装を着て解説があります。全然関係ないですけど、テイラーのサスキアさんが着ている手の込んだ手編みのセーターが素敵すぎる。

最後はまもなく《ジゼル》の公演を控えた時間帯の劇場の紹介です。コーナー君は今夜は農民の役なので、楽屋でその準備をして舞台袖へ向かいます、途中で衣装担当者にウィリたちの衣装について質問をするのですが、その中で公演後の殺菌にはウォッカを使うと言っていました。知らなかったー。

さらに楽屋の準備のシーンの後、実際に舞台袖からステージに出て、ウォームアップしているダンサーへのインタビューの後、まさに幕が開きますという直前のステージを見せてくれてから映像が終わります。大変よくできた映画を見た満足感でいっぱいです。ブラボー、DNB!

Staatsballett Berlin

ベルリン国立バレエ団はChristine Camilloのコーチ、カンパニー・ピアニストのBaşak Dilara Lakatosによるクラスレッスンをベルリン国立歌劇場(Staatsoper Unter den Linden)の舞台上で、観客を入れて行われていました。

ポリーナ・セミオノワ、デイヴィッド・ソアレス、エリサ・カリージョ・カブレラのプリンシパルをはじめ、多くのダンサーが参加。コーチはめちゃくちゃ踊って見せながら振りを出して、ダンサーをステージいっぱいに踊らせ、メロディアスな演奏も相まって会場が大いに沸いていました。

Hungarian National Ballet

ハンガリー国立バレエ団はクラスレッスン。カズレーザー?!発見(爆笑)
その後《スパルタクス》と《ドン・キホーテ》のリハーサルをダイジェストで。特に男性の力強さのある踊りはカンパニーの得意とする特徴ですね。

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