英国ロイヤル・バレエ団 シネマ《くるみ割り人形》お見逃しなく!

本日2月16日から英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24の第3弾、ロイヤル・バレエのピーター・ライト版《くるみ割り人形》がシネマで1週間上演されます。

クリスマスのバレエなので、ちょっと時期外れなのが残念ですが、チャイコフスキーの音楽とたくさんのキャラクターが登場する楽しいバレエに胸がワクワクします。

このバレエは小さいお子さんのバレエ鑑賞デビューに最適なように、バレエの全幕ものにしては時間が短いので、先月のドン・キホーテと同じく初心者さんにも最適な作品のひとつです。

↓この映像は以前に収録された公演のリハーサル風景などです。今回のシネマの映像は見つけられなかったです。

目次

キャスト

↓キャストはこちらをご覧ください。

ピーター・ライト版《くるみ割り人形》のあらすじ

ピーター・ライト版のくるみでは、ドロッセルマイヤーは魔術師で機械仕掛けおもちゃや時計の製作者。かつて王宮に雇われていたとき、国中のネズミの半分を退治する罠を発明しました。

邪悪なネズミの女王は復讐として、ドロッセルマイヤーの甥であるハンス・ピーターに魔法をかけ、彼を醜いくるみ割り人形に変えました。魔法を解く唯一の方法は、くるみ割り人形が勇敢にねずみの王様を倒し、醜い姿にも関わらず彼を愛してくれる少女が現れることでした。

ドロッセルマイヤーは、友人のシュタールバウム一家が主催するクリスマスパーティーでゲストをもてなすために招待されたとき、これは絶好の機会かもしれないと思います。

彼らの娘のクララは、くるみ割り人形に閉じ込められているハンス・ピーターより少し年下で、想像力の豊かな優しい少女です。ドロッセルマイヤーはくるみ割り人形をクララにプレゼントし、クララがドロッセルマイヤーの願いを叶えてくれるようにガイドする特別なクリスマスの天使を作りました。

クリスマスパーティのあと、客人たちが去り、家族が寝静まると、クララは弟に壊されてしまったくるみ割り人形が心配で様子を見に広間に戻ります。そこへドロッセルマイヤーが現れ、時間を止めて魔法の世界にクララを引き入れます。

ドロッセルマイヤーは魔法の力でリビングルームを戦場に変え、ネズミの王を召喚します。ネズミとおもちゃの兵隊の戦いで、くるみ割り人形はクララの深い思いやりの力を得て、ねずみの王様を倒し命を救われました。

呪いが解けて元の姿に戻ったハンス・ピーターとクララは、ドロッセルマイヤーの作ったクリスマスの天使の導きで雪の国を通離、お菓子の王国の砂糖菓子の庭へ魔法の旅をします。そしてその王国でシュガープラムフェアリーと王子に出会います。

くるみ割り人形の中に閉じ込められていたハンス・ピーターは、シュガープラムフェアリーに自分の大冒険と、クララがどのようにして自分の命を救ってくれたかを語ります。その後、彼らはドロッセルマイヤーが彼らの勇気を称えるために魔法をかけた素晴らしいおもてなしを受けます。

現実に戻ったクララはどこか見覚えのある青年に出会います。これまでのことが夢か現実かわからずドロッセルマイヤーに確認しようと辺りを探しましたが、プラムシュガーフェアリーがかけてくれたネックレスが自分の首にかかっていることに気づき、夢の中の出来事ではなかったと確信して幸せな気持ちで家に帰ります。

一方、ドロッセルマイヤーは自身の工房に戻り、魔法が上手くいったのか心配しているところに、甥のハンス・ピーターが姿を現しました。呪いは無事に解けていました。なんて嬉しくて素晴らしいクリスマス・プレゼント!!

というようなお話です。ロイヤル・バレエの公式ウェブサイトのシノプシスにほんの少し付け足してアレンジしました。

鑑賞レポ

土曜日でも空席が目立ちました。やはり季節外れですし、パリ・オペラ座バレエの来日公演中なのもあるかもしれません。それでも素晴らしい公演でしたので、たくさんの方に観に行っていただきたいです。

あらすじを読んでいただくとわかると思いますが、ピーター・ライト版《くるみ割り人形》ではドロッセルマイヤーがキー・パーソンで、その演技力・表現力がとても重要です。今回のシネマのドロッセルマイヤーはお馴染みのギャリー・エイヴィスではなく、トーマス・ホワイトヘッドでした。

トーマスは孤独でとっつきにくく変わり者のドロッセルマイヤー像を演じたのだと思います。でも、クララはそんなドロッセルマイヤーにすぐに親しみを感じているような様子でしっくりこなかったです。ギャリーさんのドロッセルマイヤーならそれで良いのですが。

最後の場面では甥っ子が戻ってきたことを喜んで、しっかりと抱き合って喜びをかみしめ大円団&幕なんですが、この場面がただ振付通りで感動がなく、ドロッセルマイヤーの存在がこんなに重要だったとは、と今回初めて気付きました!

トーマスは現実的な人物像を演じることがとても上手いので、「ハンス・ピーターの呪いを解く」ためにクララを使って魔術をかけ目的を果たす、ような重々しくてダークなドロッセルマイヤーだったら、と妄想しました。今後ギャリーさんとは異なるドロッセルマイヤーを作ってくれたらさぞ面白いだろうなと期待も膨らみました。

ドロッセルマイヤーの次に重要なのがシュガープラムフェアリーとその王子。今回のキャストはアナ・ローズ・オサリヴァンとマルセリーノ・サンベで、日本ではいわゆる大人気のキャスティングではないでしょう。私的にはアナ・ローズの評価は最高ではないですが、マルセリーノはいつも目を奪われるダンサーなのでとても楽しみでした。

私がアナ・ローズに物足りなく感じるのは、パートナーとのコンタクトが希薄な感じなのと、役柄にあったニュアンスの付け方です。ロイヤルのプリンシパルなのに首、手首のラインも結構気になります…

が、このシネマの公演では、アナ・ローズはロイヤル・バレエの気品溢れるシュガープラムフェアリーを、きっちりとスタイルを守って好演していて予想以上に良かったです。特にヴァリエーションとコーダは丁寧にステップを踏み、また観たいと思わせる美しい瞬間が多くありました。

マルセリーノはパーフェクトにくるみ王子でした。シュガープラムフェアリーが美しく見えるように、優しく丁寧なサポートには余裕が感じられ、安心して観ていられるパ・ド・ドゥ、バリエーションやコーダのクリスプでキレのあるジャンプやターンであっても、王子らしくノーブルでエレガントでした。

全編ほぼ出ずっぱりのクララにはファースト・アーティストのソフィー・アルナット、ハンス・ピーター(=くるみ割り人形)はソリストのレオ・ディクソン、2人とも可愛らしいお顔とほっそりした姿なので、役柄のイメージにぴったりでした。

ソフィーはしなやかな肢体を持ち、シャープで素早い脚先のムーブメントが美しく、近い将来のジュリエットに繋がりそう!と思いました。レオも伸びやかで、クリーンなテクニックがとても良かったですが、2幕のお菓子の国の冒頭の長いマイムは伸び代があるように思いました。

主役たちの他にも、アラビアのオリヴィア・カウリーとルーカス・B・ブレンツロド、中国のフランシスコ・セラノ&スタニスラウ・ヴェグリジンが印象に残りました。

次回のシネマは4月、バレエ《マノン》です!

3月はシネマの上映はありません。
第4弾はまたバレエで、サー・ケネス・マクミランの《マノン》が4月に上映予定です。今年はパリオペのマノンをまもなく日本の舞台で観れますし、最高峰のドラマティック・バレエを堪能できる機会が多く幸せです。

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